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2009/12/01 第4回 最果てに破れ散る ~稚内
みなさん、こんにちは。寒さ本番の日々、いかがお過ごしでしょうか。この原稿を執筆している時点では未だ根雪にはなっていない札幌ですが、もういつ視界が白く埋め尽くされるのか気になる昨今です。
その寒さが厳しくなる季節に、さらに寒い場所へ行くというのが北海道の醍醐味。もっとも旅をするぞと決めた時に空が晴れる保証なんかないわけですから、あとは運任せとなるちょっと不安混じりの旅でもあります。
今回の目的地は「稚内」、まさに日本の最北端。そのイメージたるや誰もが「さいはての町」をイメージするでしょう。ええ、本当にここはさいはての地でした。やられました。もう皆さんに最初に謝っておきます。なんでかと云いますとね、思ったような撮影ができなかったのです。そりゃ、オマエの腕が悪いんだろがぁ、と罵って頂いて結構のていたらく。いけませんね、完全にリサーチ失敗でございました。
実は狙っていた被写体がことごとく「閉館」もしくは「冬期間封鎖」状態でして...でも、ベタな観光地を避けるのが裏道旅ではないかと開き直ってみたり。
まあ、能書きはともかく車を道北へ走らせましょう。今回は札幌から道央道を北上し、終着の士別剣淵ICを降ります。しばし国道40号線を走り、まず立ち寄ったのが名寄市。名寄駅手前には「北国資料館」があります。もちろん夜間は閉館していますが、全国で唯一の北国ならではの保存列車があり、紹介したいと思ったのです。
北国といえば雪、とりわけ豪雪地帯である道北は交通機関にも厳しい地域。その中でも鉄道は雪との戦いでした。名寄は宗谷本線や、すでに廃止になった名寄本線、深名線の拠点として重要な駅。道北の住民の大切な足を確保するため、冬期間の豪雪対策に用いられた排雪列車「キマロキ」が完全な状態で保存されているのです。「機関車+雪をかき集めるマックレー車+雪を遠くへ排雪するロータリー車+機関車」の頭文字を取って「キマロキ」と名付けられた編成がそのままここに保存されて往時を偲ぶことができるのです。しかし、残念ながら冬期間は状態よく保存する為にブルーシートに覆われて撮影ができなかったのです。無念!また、星も雲に隠れていましたので参考までに以前、昼間に撮影した画像をご覧下さい。
名寄を失意のまま去り、一路車は北を目指します。国道40号線を再び北上すると、やがて豊富町に入ります。ここで豊富バイパスに入ればスムーズに町内を向けることはできますが、もともとさほど交通量が多い訳でもない夜間帯、バイパスではなく旧40号線(稚内国道)のまま町内へ。やがて「兜沼駅」へ向かう道道1118号線に左折する交差点に差し掛かりますのでここを左折。そのまま兜沼駅方面へ向かう途中に出くわしたのが「兜沼郷土資料質」という風情ある建物。
この郷土資料室は別名「サロベツ館」とも呼ばれているようです。元々は兜沼郵便局として1934年に建築されたもの。正面のデザインも非常にすばらしく、当時としては非常にモダンな造りです。その名も「関東甲信越式木造/兜造り」という名称なのだとか。1981年に郵便局としての役割は終え、中には郵便局の歴史や局長の所有物、兜沼地区に関連した資料が展示されているそうですが、もちろん夜間は閉館。開館は5月から10月の土日のみで9:00から16:00まで。うーん、中を見たかったなあ、という思いで三脚を立て被写体に敬意を払いシャッターを押します。ナトリウムランプが強いためオレンジ色に染まりますが、静かな夜に映える兜造りの面構えは永年の風雪に耐えた風格を醸し出し私を叩きのめしました。
国道40号線に戻った車は稚内市内へ入ります。駅方面を目指し一路目的地へ。稚内と云えばぼくはまずここを思い浮かべます。「北防波堤ドーム」こそ、稚内のシンボルでしょう。あ、ベタな観光地を避けるとか云いつつすみません。でもここを語らずに稚内を語ることはできないわけですよ。なぜならば、さいはての町がさいはてになる前の歴史を物語っているからです。戦前の日本最北端は稚内より北の樺太(現ロシア・サハリン)、それも南半分が日本の領地でした。樺太と稚内を結んだ鉄道連絡船の桟橋と桟橋に着く連絡船の乗客を守る目的で作られもので、乗客はドーム内を歩いて桟橋から連絡船に乗り込んだそう。
まるでローマの建築物を思わせる素晴らしい防波堤は1936年の完成で、設計は若干26歳の道庁技師、土谷実氏で、北海道大学を卒業後三年目の若さでこの大仕事をやってのけたそうです。長さ424mのドーム内を歩いてみると、その広さにまたまた叩きのめされます。うーん、凄い。これが26歳の若さで設計したというのだから本当に驚くばかり。
何でしょうかね、この美しすぎる防波堤っていうのは。夜に見るとよりいっそう厳かで偉大な建築物に見えてくるってものです。もう、ここで何枚撮影したでしょうか。防波堤の前は普通に道路ですが、すでに深夜なので行き交う車はほとんどありません。ええい、道路のど真ん中で三脚立てちゃえ、とばかりにカメラに集中です。車来たっていい、もう轢くなら轢いてみろっ!とばかりに気合いを込めたものの、星が...乏しいの。泣きたくなるのをこらえつつ、次は稚内市内を見下ろせる、ちょっと高台にある「稚内公園」に行こうと車を走らせました。
稚内公園には「九人の乙女の像」があります。戦争も終わった1945年8月20日、南進するソ連軍が上陸しても電話交換業務の移管が行われるまでは業務を遂行すべく、最後は集団自決を図った真岡郵便局の電話交換手九人の乙女達の物語はあまりにも有名だけれど、ぼくはこの事実を知ったのが10年ほど前だった。この慰霊碑でもある像を見て思わず号泣してしまったのです。まだ若い乙女達の悲しい決断を思うと今の平和の時代に生まれたことを感謝せざるを得ないと。その慰霊碑を星の下で撮影したいと思ったんです...でも、でも。「路面凍結のため閉鎖」、無情に閉まるゲートの前で、またまたまた失意で動けなくなる私。もーっ!確かにゲートの前はツルツルに凍った道路。車をバックさせUターンしようと思ったら、いきなり車が滑って横を向いたまま道路を降りたという怖さ、ああ、やっぱり閉鎖は致し方ないかと妙に納得。いや、危ない危ない。
じゃあ、どんなにベタでもいいよ、もう最北端に行こうじゃないの、と向かったのは宗谷岬。ええ、行きました。でも、なんだかイヤな予感がするのです。車が真っすぐ走らないのですよ、あらあら。すごい横風...岬の駐車場に着いてドアを開けようとしたら...ドアが開きません(笑)。うおおお、すごい風!実はずっとラジオを付けていたんですが、宗谷には強風波浪注意報が出ているようで、どうやら風速15m/sとのこと。 負けない、いいの、大丈夫...風に飛ばされそうになりつつカメラと三脚を取り出しセッティングしましたが...一番重量級な三脚が振動で使えない!当然星を撮影するにはいくらカメラの感度設定を目一杯上げても数秒間はシャッターを開ける必要があります。残念ながらちょっと無理。
じゃあ、風が少しでも弱い場所はないのかと、ノシャップ岬へ。稚内市内からはこちらの方が近いので最初からここにすればよかったです。宗谷岬よりは風が弱いとはいえ、ここもかなり風が吹いています。実は、私このノシャップ岬にある稚内灯台が好き。宗谷岬にも宗谷岬灯台がありますが、カタチはこっちが断然好き。紅白のキレイな灯台は43mの高さを誇り、これは日本第二位なのです。しかも、日本の灯台50選にも選ばれたほど魅力がある灯台で、国境に位置する国際海峡を守る重要な役割を果たします。閃光は20秒に二回、33km先まで光を届けます。
ああ、素晴らしい。灯台の真下からやっと息をのむような美しい星がまたたきます。やっと出会えました。でも、やはり風が強いんです。三脚の足を全部伸ばさず、カメラを装着し、リモートケーブルを握りしめ、ぼくは三脚を抱きしめる。体重をかけ、風で動かないように必死でしがみつく。何度も何度もシャッターを切ります。モニターで確認する時間が惜しいとばかりに、次々に撮影します。カメラを通して星を見るなんて野暮なこと、やはり肉眼で見るに限る!いや、実はキレイに尾を引く流れ星が見えたんです。
このさいはての地で、果ててしまったぼく。いや、ホント外しまくった旅でしたが、こんなこともありますよ。そりゃあ、限られた時間ではるばる行って星が見えないことだって(というか見えない確率の方が多い季節なのかも)あるわけです。でも、最後に最高の星が拝めてよかった。星へ届けと光を放つ稚内灯台の真下で、日本最北の星空をずっとずっと眺めていたぼくでした。
では、また次回の旅でお会いしましょう。(つづく)
◆稚内へのアクセス
札幌からは道央道を旭川方面へ、終着地士別剣淵ICを降りたあとは稚内方面へ国道40号線を走ります。このルートでは大きな峠道もないため、比較的冬期間でも走りやすいです。
日本海側から国道231号線を北上するルートもあります。石狩~留萌を経て、留萌らは国道232号線を海沿いに走るルートは昼間、海とサロベツ原野を楽しめるのでおすすめです。ただし、冬期間は強風、凍結路面にじゅうぶん注意してください。
◆おすすめ撮影ポイント
●豊富町兜沼は水鳥の生息地でもあり、サロベツ湿原にも近い自然豊かな公園があります。ただし、雪が深い場合は足下に注意してください。また、兜沼郷土資料室は冬期間閉鎖されていますが、外観は鑑賞可能です。もし時間があればぜひ見て頂きたい建物です。北海道には非常に珍しい建築物です。(2008年に放映されたドラマ、九人の乙女の物語の舞台になった真岡郵便局のロケに使われました)
●稚内公園は市内高台にあり、市内を見渡すことのできる場所として外せないスポットなのですが残念ながら閉鎖されます。来春以降、稚内を訪れる機会がありましたらぜひ立ち寄って下さい。実は2006年に廃止されましたが、日本最短のロープウェイがあったのです。
●北防波堤ドームは、稚内駅より少し北へ歩くとすぐに見つかります。夜間でも明るいので撮影も比較的簡単に行えますが、街灯などの明るさゆえ、星と絡めるのはちょっと難しいかもしれません。威厳を感じる北海道遺産にも選ばれた建築に見とれます。かなり長い防波堤なので広角レンズは必須です。
●ノッシャップ岬(野寒布岬)へは市内中心部より道道254号線で北上します。稚内灯台は日本第二位の高さを誇る大型の灯台で、見応えがあります。宗谷岬灯台と並んで国際海峡である宗谷海峡の安全を見守る重要な役割を果たしています。日中は利尻、礼文島を望む場所にあり、夕暮れの景色は最高です。風が強いことも多いので、望遠レンズを使用する場合は必ず三脚を使いましょう。
晴れていれば夜間、星が非常に美しく撮影好適地です。街灯の影響が少なく、海と絡めての撮影にも適しています。
◆その他
市内はコンビニも多く、食料調達は夜間でも大丈夫です。積雪時は、風が吹くと凍結しやすく運転にはじゅうぶん注意して下さい。
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- 写真家
上原 稔
UEHARA MINORU
1960年秋田県生まれで札幌育ち。東京、札幌で写真スタジオ勤務後、富士写真フイルム株式会社(現・富士フイルム株式会社)札幌営業所勤務。
会社員生活を20年経て2年前に独立し、現在はNHK文化センター北海道総支社にて写真教室の講師などを行っています。得意な写真分野は「町」「夜」「旅」など。
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http://ariaribox.exblog.jp/















