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2009/11/04 第3回 北海道の炭鉱発祥地~三笠市

みなさん、こんにちは。いよいよ北海道も本格的な冬を迎える季節になりました。寒さは日ごとに増しますが、星空がよりきれいに見えるシーズンでもあります。さて、当コラム三回目に選んだ旅先は「三笠市」です。

北海道の歴史に欠かせないのが様々な産業の発展ですが、その中でも石炭産業は北海道の重要な要となりました。それらを陰で支えていたのが鉄道です。二回目に続き鉄道ネタが一部被りますがご容赦を。

北海道の鉄道の歴史と云えば誰もが小樽・手宮線を思い浮かべるでしょう。1880年に北海道で初めて鉄道が開通した路線ですが、日本の鉄道としても三番目に古い歴史を誇ります。1985年に廃止された後は、一部施設や車両、線路も保存され、今では小樽市総合博物館として親しまれています。

この手宮線と結ばれ1882年に開通したのが「幌内線」です。幌内はいち早く明治初期に炭鉱の調査が開始され、良質な石炭鉱脈が発見され幌内炭鉱が誕生しました。その石炭を運搬するために鉄道が敷かれたものです。(当時は官営幌内鉄道として開通)その後、北海道炭礦鉄道として運営されていましたが1906年に国有化されました。とりわけ空知地区には炭鉱が多くあり、そのための鉄道も多数存在し、沿線は多くの集落、街が存在していました。しかし、石炭産業の斜陽化、そして炭鉱の閉鎖により周辺人口の減少に伴い、多くの路線が廃止になったのです。幌内線はJR移行後の1987年、JR線廃線第1号となってしまいました。北海道の鉄道の多くは石炭産業とは密接な関係もあったため、歴史背景を考えると廃線は致し方ないのですが、網の目のように北海道中を網羅していた鉄道も、今はずいぶん寂しいものとなりました。

三笠市は札幌からほど近く、岩見沢を過ぎればすぐに三笠市内へ入りますが、まずは幌内線の跡地を訪ねてみようと思います。国道12号線を走り岩見沢市内中心部を少し過ぎ、やや左にゆるくカーブするあたりに道道917号線(岩見沢桂沢線)に向かう道が右側にあり、そこから三笠方面へ向かいます。詳しいルートは後述するとして、幌内線旧萱野駅舎を最初の目的地にしました。

幌内線旧萱野駅舎画像をクリックすると拡大表示します。

この旧萱野駅は2001年、地元有志、地元の建設会社が往年の姿に復活させて以来、とてもきれいに保存されており、今ではライダーハウスとして多くの旅人に利用されています。ホーム側には車掌車も保存されており今にも列車が来そうな雰囲気で、ここでボーッといつまでも空を眺めていたくなるほど。いかに地元の人々に愛されていたのか、駅舎の柱などを手で触り、想いを感じてみます。そう、石炭だけではなく地元の大切な足として岩見沢へ通勤、通学などのためにも利用した方々が多くいたのでしょう。この駅には人が集い、人の声が溢れていたはずです。今は静かにひっそりとした萱野の集落、その昔の賑わいを思い浮かべて次の目的地へ向かいます。

再び道道917号線へ戻り、三笠市の中心街へ向かうと突き当たりを左折すれば旧三笠駅にたどりつきます。ここは現在三笠鉄道村の施設の一つであるクロフォード公園として活用されており、構内には当時の三笠駅の旧名である幌内太駅の雰囲気を醸し出す駅舎や機関車、貨物列車が保存されています。

幌内太駅の雰囲気を醸し出す駅舎や機関車、貨物列車画像をクリックすると拡大表示します。

旧三笠駅構内及び、旧幌内駅構内は北海道の鉄道の歴史を後世に伝えるため、三笠鉄道村(クロフォード公園・三笠鉄道記念館)として整備されているのですが、残念ながら10月16日~4月15日の間は冬期間閉鎖になっており眺めることは可能ですが施設内部の見学は不可能で、保存車両もシートに覆われています。それでも、往年の雰囲気を味わうには十分で味わい深い木造の跨線橋の下で星空を眺めるというのもなかなかのもの。ぼくは跨線橋が好きで、どうしても登りたくなります。跨線橋の上から窓を開けて、駅舎や線路を俯瞰で見るのがとても好き。そんなことをしていると子供の頃を思い出すのです。あるいは、跨線橋やホームですれ違う、毎朝見かける女の子にドキドキときめいたりした想い出はありませんか?

そして線路上に保存されているピカピカに光るディーゼル機関車DD51の姿に(あくまで個人的なことですけれど)うっとりしつつ周囲の静けさと星の美しさにしばし時を忘れます。ここも大切に管理されており、三笠にとって鉄道がいかに重要であったことが伺い知れるのです。

次はクロフォード公園から道道917号線を再び走り、幾春別方面へと向かいましょう。途中には旧唐松駅舎も保存されているのも見えます。やがて道道116号線に合流し、そのまま幾春別町内へ入ると幌内線の終着地である幾春別駅があった、現在は幾春別バスターミナルとなっている場所に着きました。そこから旧駅前通りの北側に目をやると奔別(ぽんべつ)炭鉱立坑櫓が見えるはずです。三笠にある数多い炭鉱の中でも、当時東洋一と云われていた高さ51.2m、深さ740mを誇る立坑櫓は1960年に完成したものです。しかしわずか11年後の1971年に閉山されたあと、今は一般の工場として一部施設が使われているだけです。

奔別(ぽんべつ)炭鉱立坑櫓画像をクリックすると拡大表示します。

北海道で重要な産炭地として三笠地域が君臨していたことを示す遺構の一つなのですが、その中でもひときわ壮観で威厳を感じる奔別の立坑櫓は、町の誇りとして今もその姿を誇示しているようです。幾春別の市街地は商店もほとんどなく、今では往時の賑わいを感じることはできませんが、この三笠を支えてきた産業のかけらを見て歩くことでこの町がとても好きになっていきます。また、三笠の歴史をじっくり見て学ぶならば、すぐ近くに三笠市立博物館もあります。三笠市立博物館には、この三笠に生息していた天然記念物エゾミカサリュウ化石をはじめ、アンモナイト等、1000点以上の展示物があります。また、炭坑の町として栄えた歴史を刻んだ資料や、三笠の豊かな自然を知ることができる屋外博物館なども整備されています。 ぜひ、昼に訪れたい施設ですね。

さて、いよいよ旅の終着地へと向かうことにしましょう。先ほど走ってきた道道116号線をさらに奥へ進むと、やがて右側に桂沢湖が見えてきました。案内看板に沿って湖畔へ向かう道へ降り、さらに駐車場からは徒歩で向かいます。桂沢湖は桂沢ダムの完成とともにできた人造湖ですが、周囲の景観がよく、紅葉も見応えがあります。夜ですとほとんど灯りはありませんが、そのぶん星空が楽しめるという訳です。

桂沢湖画像をクリックすると拡大表示します。

さすがに深夜ですと人影もなく、一人ではちょっと怖く感じるかもしれませんね。因みにぼくは全く怖く感じることはありません。夜にどんな山奥でも入って行きますね。でも、一番怖いのはクマでしょうか。さすがにこればっかりは気をつけています。クマ除けのため明るい懐中電灯は必須ですし、もし車が近くに停めておけるのであれば定期的にクラクションを鳴らし警戒します。(あたりの静けさ故にケモノの遠吠えなどが聞こえてくると、ちょっと警戒心が働きますよ)

昼間でも見応えのある景色ですが、やはり夜の桂沢湖はひときわ神秘的でカメラのシャッターを押しつつ、しばし星に見とれていました。あいにくこの日は雲が多くなってきたのですが、流れる雲もまたアクセントになったかなと云い訳しておきます。ただ、この美しい景色も星がこうして見られるのは先人の苦労と汗のおかげであると感じます。三笠をはじめ北海道の産業を長く支えてきた炭鉱ですが、閉山に伴い町は様変わりしました。ぼくの先輩がこの三笠の出身で昔、静かに語ってくれたことがあります。

「炭坑夫は稼ぎもよくて、あの頃は町全体が浮かれていた。札幌の町なんかメじゃなかったね、凄かったんだ」しかし、残念ながら炭鉱で起こった様々な悲しい出来事は町に影を落とすこともありました。夕張市が財政破綻したことで、旧産炭地の厳しい現状を目の当たりにすることがしばし続きました。でも、いま、町は元気を取り戻しつつあります。ここには誇るべき環境がありますから。旧産炭地のすばらしい景色、飾らない町の姿を皆さんにぜひ見て欲しいのです。広い北海道、点在する町にも人の暮らしは続き、新たな息吹を感じる瞬間があります。「そこに人が居る限り希望が失われることはない」そう思いました。美しい星空、これも立派な資源です。

さて、またまだ旅は続きます...(つづく)

◆三笠市へのアクセス
国道12号線、岩見沢を過ぎて「三笠市」方面へ「岡山交差点」を右折、道道116号線へ。高速道路の場合は「三笠IC」で降り、道道を左折。

◆旧萱野駅
札幌からは国道12号線を走り岩見沢市内中心部を少し過ぎ、やや左にゆるくカーブするあたりに道道917号線(岩見沢桂沢線)に向かう道が右側にあります。目印はガソリンスタンド、そこを右折し自衛隊岩見沢駐屯地方面へ向かいます。しばらく道なりに進むと、道道30号線(三笠栗山線)と交差します。この交差点を左折するとすぐに右側に萱野中学校が見えてきます。少しそのまま進むと右へ入る細い道があり、すぐに駅舎が見えると思います。
高速三笠ICから旧萱野駅へ向かうには、ICを降りて道道をまたいで直進。そのまま道なりに進むと道道30号線へ交差。左折し、萱野中学校手前の道を左折。

◆クロフォード公園
道道917号線を三笠市内中心部まで突き当たりまで進み、すぐ目の前が旧幌内太駅舎。

◆三笠鉄道記念館
クロフォード公園から道道1129号線、幌内方面へ。鉄道記念館そのものは冬期閉鎖中ですが、幌内駅構内の雰囲気を感じ取って欲しいです。また幌内までの途中、道道に沿って右側に線路が残っています。

◆旧奔別炭鉱
道道917号線、または道道116号線を幾春別方面へ走り、幾春別バスターミナルのある交差点を左折。突き当たりの工場敷地内が奔別炭鉱跡です。

◆桂沢湖
幾春別から、さらに道道116号線を東へ向かい、桂沢ダムを過ぎるとほどなく湖畔へ向かう道があります。

◆撮影ポイント
大正時代の面影を残しつつきれいに整備されている旧萱野駅舎は裏側のホームに面した方からの眺めもいい。クロフォード公園は冬期間駅舎内に入ることはできませんが、木造の跨線橋をぜひ見て欲しいです。幌内方面には古い町並みが少しだけ垣間みられ、どことなく懐かしい雰囲気があります。旧幌内線の駅舎としては道道917号線沿いの旧唐松駅も地元の方によってきれいに保存されています。日中は開放していることもあります。
奔別立坑櫓は敷地内へ入ることはできませんので、望遠レンズが必須になります。また、脇道を登ると俯瞰で撮影できるポイントがありますが、夜は足下が暗いため危険です。 桂沢湖は昼夜問わず景色がいいので、じっくり撮影が楽しめますが深夜の行動は足下にじゅうぶん注意してください。(湖畔は段差がいくつかあります)
※星空の撮影は、寒い季節なのでバッテリーの予備を必ず用意して下さい。

◆その他
食料品の調達は市内にコンビニが数軒ありますので不便はないでしょう。トイレはクロフォード公園や桂沢湖畔、幾春別バスターミナルにもあります。

◆注意
三笠市内には炭鉱遺構が数多くありますが、基本的に施設内への侵入は絶対にお止め下さい。危険な場所も多いため、注意して下さい。


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プロフィール

写真家 上原稔 / UEHARA MINORU
写真家
上原 稔
UEHARA MINORU

1960年秋田県生まれで札幌育ち。東京、札幌で写真スタジオ勤務後、富士写真フイルム株式会社(現・富士フイルム株式会社)札幌営業所勤務。

会社員生活を20年経て2年前に独立し、現在はNHK文化センター北海道総支社にて写真教室の講師などを行っています。得意な写真分野は「町」「夜」「旅」など。

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http://ariaribox.exblog.jp/


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